Reflecting Hiroshima – リフレクティング・ヒロシマ2024-2025プログラム「山と海のあいだ」

お知らせ
2024-2025プログラム「山と海のあいだ」

 神話世界に深く根を下ろし、人々の営みの基盤となる地形を形成した中国山地。その西部に位置する冠山を源流にもつ太田川は、幾多にも枝分かれしながら山谷、都市の間を流れやがて瀬戸内海へと注ぎ込み、広島デルタを形成している。古代たたら製鉄、毛利輝元の築城、江戸時代の干拓、人々の生活や文明の発達は、山から流れゆく川や海、周辺の自然とともにあった。古代から現代にかけて脈々と流れゆくデルタの流体を拠り所に、表現者や研究者たちの巨視的かつ微視的な眼差しを交差させながら、ヒロシマを取り巻く時間、空間を新たに捉え直すことを試みる。
 
 自身の家の庭や裏山をフィールドとし、身の回りで日々行われている動植物の営みや見えざる生命の循環から、太古の土地の隆起、川の流れまで想像を伸ばす日本画家・山本志帆。自らの身体的な体験を軸として、自然と人にまつわる物事の関係や距離について観測し、その曖昧な領域に接触しようとするアーティスト・前田耕平。マガキの間隙に存在するミクロな領域からプラネタリーな世界までを眼差し、複数種の絡まり合う社会を思考し批評する文化人類学者・吉田真理子。土地固有の記憶を呼び覚まそうとするアーティスト・吉田真也はダンサーの中西あいとともに、デルタの上に幻影を作り出すことを試みる。分野の垣根を超えた人々の実践は相互に反響しながら、ワークショップ、フィールドワーク、トーク、様々なかたちで展開され最終的な展覧会へと繋がっていく。

2024-2025プログラム「山と海のあいだ」

プログラム詳細

Vol.1 山本志帆【土と膠で「デルタ」を描こう】


かつて太田川上流ではかんな流しと呼ばれる方法で砂鉄が採取され、製鉄の原料に使われていました。太田川で採取された砂鉄と土を日本画で用いる膠で溶いて、参加者とともに絵を描くワークショップを行います。


詳細はこちらから
会場:「雁と鶴」
住所:広島市中区鶴見町 9-11 第2三沢コーポ 104号室
日時:2024.11.23(土) 14:00 – 17:00
料金:無料 定員: 先着10名

Vol.2 前田耕平【遡上のためのフィールドワーク -太田川- 】


アーティストの前田耕平は太田川との関わりを模索し、遡上をヒントにフィールドワークを行います。滞在中にトークイベントを開催し、前田の東京や京都の川にまつわる制作の話やフィールドワークで得られたことを共有します。参加者とともに「太田川」から考えを巡らせていきます。
(写真、《東京遡上》パフォーマンス風景、2023、隅田川)

※滞在期間:2024.12.21 – 12.22
※滞在場所:タメンタイゲストルーム(広島市中区鶴見町9-11 第2三沢コーポ402号室)
※トークの詳細については、決定次第HP等でお知らせ致します。

Vol.3 吉田真理子【牡蠣と考える】


マガキとそれを取り巻く人間や資本社会の関わりを研究している文化人類学者の吉田真理子に、広島の地御前で行われている漁場再生事業「海底耕耘」を事例に、マルチスピーシーズ民族誌の視座についてお聞きし、広島における人類学とアートの接続についても考えていきます。

(photo by Mariko Yoshida)

登壇者:吉田真理子、吉田真也(聞き手)
※トークの詳細については、決定次第HP等でお知らせ致します。

Vol.4  映像プロジェクト【デルタに起つ】


アーティストの吉田真也と中西あいは、デルタの上流から下流までを辿るようにリサーチを行い、参加者と共同で、クロマキーという撮影方法を用い、デルタに浮かび上がる幻影を出現させます。


※プロジェクトの進行は随時HPで更新していきます。

参加者

吉田真也(よしだ・しんや)
アーティスト。1994年青森県生まれ。映像や写真を用い文化的、社会的、歴史的性格に基づいた土地固有の営みの蓄積に着目し、複数の記憶を呼び覚ますような作品を制作する。主な展覧会に、札幌国際芸術祭2020「Of Roots and Clouds ここで生きようとする」(2020年)、国際交流基金 (JF) 主催 オンライン展覧会『距離をめぐる11の物語 : 日本の現代美術』(2021年)、青森公立大学 国際芸術センター青森「Making Things」(2022年)

山本功(やまもと・いさお)
アートマネージャー。タメンタイ合同会社代表社員。1992年広島市生まれ。京都大学文学部で人文地理学を専攻後、公益財団法人福武財団にて直島コメづくりプロジェクトを担当。その後、2018年より地元広島に拠点を移し、瀬戸内地域のアーティストを紹介するアートマネジメント事業や調査事業等を手掛ける。2021年からは自社施設「タメンタイギャラリー鶴見町ラボ」を運営し、美術だからこそのやり方で場所性、空間性へのアプローチを行う企画を中心に、実験的、挑戦的な展示を定期的に開催している。

中西あい(なかにし・あい)
表現者/振付家。1986年大阪府生まれ名古屋育ち。幼少期からクラシックバレエを学び、その後コンテンポラリーダンスに出会い、身体を通した作品創作を続ける。広島を拠点にアーティスト・コレクティブ「踊り子の休日」を企画。

山本志帆(やまもと・しほ)
日本画家。1982年岐阜県生まれ。動植物と人間の関係性や種の絡まり合いに関心を寄せつつ平面作品を制作。近年は山と川の繋がりや営みに着目した絵画を制作することに加え、自宅周辺で採取したものや制作で出た屑、これまでの過去作品などを分解し、自宅の庭で再構築を試みている。主な展覧会に、個展「山をくずして」(2022年広島,2023年大阪) 個展「川の道」(2023年島根)

photo : Jun Sakamoto

前田耕平(まえだ・こうへい)
1991年和歌山県生まれ。自身のルーツとなる紀伊半島での風土や体験、同郷の博物学者である南方熊楠の哲学を根幹に「自然と人の関係や距離」をテーマに活動。国内外の自然地形や生態系、文化や信仰に目を向け、フィールドワークから、写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションなどの作品を制作。近年は「高瀬川モニタリング部」や、「動物園の未来ラボ」プロジェクトなど多様な活動を行う。主な展覧会に、個展「点る山、麓の座」(国際芸術センター青森)、「あわいの島」(アドベンチャーワールド、和歌山)、「タイランドビエンナーレ 2023」(チェンライ)、「紀南アートウィーク2021」(南方熊楠顕彰館、和歌山)、など。
Photo:Toma Yamasaki

吉田真理子(よしだ・まりこ)
広島大学大学院人間社会科学研究科助教。専門は文化人類学(博士・オーストラリア国立大学)。研究の関心は、水産コモディティチェーン、気候変動の知識生成、フェミニスト科学技術社会論。海洋変化による生態系撹乱や水産バイオテクノロジーの課題など、牡蠣の商品網で多層化する不確実性や不安定性について調査を行う。人新世における共生とは何かを再考する研究を行なっている。主要論文に“Cultivatingthe Ocean: Reflections on Desolate Life and Oyster Restoration in Hiroshima”(In Nurturing Alternative Futures:Living with Diversity in a More-than-Human World, ed. Muhammad Kavesh and Natasha Fijn. London: Routledge)、共編著に『食う、食われる、食いあうマルチスピーシーズ民族誌の思考』などがある。)

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